山梨で起業のお手伝いをしました。キクラゲ栽培です。そこで思ったこと。

2020年春から山梨での起業のサポートをしています。山梨の若手二人が地域金融機関を辞めました。彼らは、「山梨県を基盤とし山梨の事業を盛り上げていきたい。事業存続のための基地(BASE)を作っていきたい。」という思いから、独立されました。(株)山梨ベースという会社名です。

ちょうど、金融機関を辞められる頃にご縁があり彼らの想いに賛同し、お手伝いすることにしました。

立ち上げ時に『キクラゲ』の栽培をすることが事業として決まっていましたが、どのように推進していくかの道筋は未定でした。

創業の意図は何か

創業の想いを他者にどのように伝えていけばいいか

どのような組織の立て付けが先々のことを考えて有効か

事業化成功の可能性の高いアプローチは何か

どのような人を巻き込んで事業展開していくべきか

どのような管理体制が最適か                                                                          

最終的に山梨県にどう貢献したいか

等を徹底的に話し合いながら、シナリオを固めていきました。

そして、2021年春頃から『キクラゲ』事業を立ち上げました。これは、コンテナを活用してキクラゲを栽培するものです。

まずは、コンテナを購入しました。

結構大きい箱ですね。内寸は、縦2.5m × 横12 m × 高さ2.5mです。

こちらに棚を備え付け、菌床(キクラゲの種)を購入して、栽培開始です。

コンテナ栽培の良いところは、エアコンで気温を一定に保つことで、季節や場所にかかわらず安定して収穫が見込まれるというところです。農業なのにキャッシュフローが予測できる!というところが強みです。

一定の大きさに成長したら、収穫して袋詰めします。

一サイクルは、おおよそ三週間です。

これを袋詰めします。

袋詰めしたものを関東のスーパーで販売し始めました。『甲州きくらげ』というブランドです。こちらの写真は、生キクラゲですがそれ以外に乾燥キクラゲや漢方茶キクラゲなどに展開していきます。キクラゲは、食物繊維、ビタミンD、鉄分などが豊富に含まれており、体質改善の効果が見込まれるようです。

キクラゲが爆発的に売れることはないでしょうが、販売ルートを確保すれば安定して、コツコツ売り上げることができます。キクラゲを料理の中で探してみて下さい。主役ではないですが、様々な料理にちょこっと入っています。

今後、安定した販売先を探しながら、コンテナを1基ずつ増やしていき、まずは5基まで持っていきます。その後は、フランチャイズ展開で仲間を増やしていくことを企図されています。

最後にお金の話です。1コンテナ当たりで、人件費が仮にゼロだとしたときに残る年間利益(税金を払う前)が約4百万円と試算しています。

以上のようにちょっとサポートさせていただくだけでも、しっかり事業化とその後の展開を前提とした軌道に乗せることができます。スタートアップのお手伝いをしていて特に必要と思うことは、「長期目標と短期方針の策定」「PDCAを速くまわす」「協働における考え方」の三つです。

「長期目標と短期方針の策定」

いつも書かせていただいていることですがゴールを設定し、そこへ至る道筋を作ることは重要です。あらかじめ策定しておくことによって、歩くルートの安心と確信が高くなります。スタートアップでは特に手さぐりになりがちなことが多いので、この安心と確信は、とてもありがたいお守りになります。上述しましたように山梨ベースについては、徹底的にディスカッションしてまとめました。

「PDCAを速くまわす」

日々の業務は、試行錯誤の連続です。わからないからといって、何かやる前に考えすぎの傾向がある方がいらっしゃいます。PDCAのPばかり叩いて吟味しているという印象です。儲かるか儲からないかは、究極的には事前にはわからないものです。なぜなら、活動する人間の能力、活動レベル、意識の持ち方で大きく変わります。したがって、Pはそこそこに(というと語弊があるかもしれませんが)Dに進んでいくことが大事です(活動しながら細かくゴールへの軌道を修正していけばよいのです)。

もちろん損はしたくないですがいくらかの資金を使っていくらかの活動をしなければ、儲かるかどうかわかりません。

なかなかDへ進めない方は、Pの期限を切るといいでしょう。期限のないPは、事業とは言えませんので、期限が来ても進めないのであれば事業化は諦めましょう。

山梨ベースについては、これ以上思考していても進まないなと思う都度、「やってみましょうか」とお声がけすることでDに進むことを体感してもらいました。

「協働における考え方」

最後に自分の中に何の機能がかけているか認識することです。近時は、起業のしやすさは、以前より増してきました。比較的廉価で機能提供できるサポートは、世の中に増えてきています。一方で、機能分化が進み、各機能の専門の度合いが増してきています。専門化が進み、深化が進んでいる環境でこれらの機能を経営者一人でカバーすることは不可能です。

そこで協働できる機能提供先を探すことになるのですが、大事なことは専門性の高い内容について、この人はプロかどうかということをこちらが素人なのに判断できるのか、という見極めの問題です。自分ができないから人に任せるのだけれどもその機能提供者のレベルの見極めができないと結果として全体がうまく機能しない、という合成の誤謬に陥ります。

これには、解決のためのいい回答があるわけではなく、観察力をあげるしかありません。しかし、協働を繰り返す中で、いい点悪い点をチェック項目に挙げておいて、そのフィルターをかけていくことでレベルの高い協働者をサーチしていくことができるようになります。

経営者の思いの強さ

先日、ペットビジネスの事業化を考えている方とキックオフミーティングをしました。

すでに経営者として、事業推進されている方ですが、考えていらしゃるペットビジネスは、全く新しいものになります。現業は、B2B、新事業は、B2Cですし、商品も全く違うものです。新規事業開拓になりますね。

この方は、10年くらい前に犬を飼い始め、それ以来、ペットにかかわるビジネスをしたいとずっと思案されていました。

これまでも、いい輸入ペットグッズを発見すれば、アメリカの田舎の本店まで足を運んだり、ドッグフードの事業売却案件があれば、製造現場を見て、交渉したりしていたようです。

これまでのところ、お一人で事業を興すところまでは至らなかったようです。確かに現業を抱えながら、新規事業を立ち上げるというのは、言うは易し、行なうは難し、ですね。

ただし、ここで大事なのは、この方の事業に対する思いがとても強いことです。ミーティングの際も犬愛を事業にしていきたいという原動力の深さを感じましたし、これまでの行動からもそう見て取れます。

私は、事業化に際して、経営者の「事業に対する思いの強さ」を見させていただくことが多いです。

ビジネスモデル、資金、人材でもなく、経営者の思いの強さが最も重要で必要な要素です。

その理由を三つあげておきます。

一つ目は、ぶち上げる力となるということです。

私は、新規事業を立ち上げたいとおっしゃる方には、必ず事業の目的、目標、理念、方針を伺うことにしております。このような内容をきちんと言葉にしておくことは、とても大事なのですが作成するのは、とてもしんどい作業なのです。逆に言えば、書けないと実現できないと思っていただいてもいいくらいです。経営者に強い思いがあると書ききることができるようになります。

二つ目は、推進する力となるということです。

実際に事業が進めば、いいことばかり起こるとは限りません。どちらかと言えば、逆風の中をかいくぐりながら事業を進めていくのが実情です。したがって、当初の士気が高くても、時には、心が折れてしまうこともあります。そのような状況下、自らを鼓舞し続けることができるのは、思いの強さです。強い思いがくじけそうな気持を支えます。

三つめは、巻き込む力となるということです。

事業が進めば、ひとりではなく、複数人で事業を推進することになります。もとより、皆それぞれ価値観も考え方も違う者たちが寄り集まっているのが組織です。にもかかわらず、経営者の中には、自分の熱い思いは、スタッフも共有しているはずだと勘違いしている方もいらっしゃいます。そんなはずは、ないのですが。

それでも、熱い思いの経営者には、そういう人と仕事がしてみたいと共感する人が集まるものです。熱い思いが同じ方向を向きやすい人を巻き込んでいくエネルギーとなります。

少々大げさに聞こえるかもしれませんが、それくらい熱い思いというのは、影響力が高いものなのです。

私は、このペットビジネスの成功が半分は達成されたとみています。これからの事業化推進のお手伝いが楽しみです。