経営者の思いの強さ

先日、ペットビジネスの事業化を考えている方とキックオフミーティングをしました。

すでに経営者として、事業推進されている方ですが、考えていらしゃるペットビジネスは、全く新しいものになります。現業は、B2B、新事業は、B2Cですし、商品も全く違うものです。新規事業開拓になりますね。

この方は、10年くらい前に犬を飼い始め、それ以来、ペットにかかわるビジネスをしたいとずっと思案されていました。

これまでも、いい輸入ペットグッズを発見すれば、アメリカの田舎の本店まで足を運んだり、ドッグフードの事業売却案件があれば、製造現場を見て、交渉したりしていたようです。

これまでのところ、お一人で事業を興すところまでは至らなかったようです。確かに現業を抱えながら、新規事業を立ち上げるというのは、言うは易し、行なうは難し、ですね。

ただし、ここで大事なのは、この方の事業に対する思いがとても強いことです。ミーティングの際も犬愛を事業にしていきたいという原動力の深さを感じましたし、これまでの行動からもそう見て取れます。

私は、事業化に際して、経営者の「事業に対する思いの強さ」を見させていただくことが多いです。

ビジネスモデル、資金、人材でもなく、経営者の思いの強さが最も重要で必要な要素です。

その理由を三つあげておきます。

一つ目は、ぶち上げる力となるということです。

私は、新規事業を立ち上げたいとおっしゃる方には、必ず事業の目的、目標、理念、方針を伺うことにしております。このような内容をきちんと言葉にしておくことは、とても大事なのですが作成するのは、とてもしんどい作業なのです。逆に言えば、書けないと実現できないと思っていただいてもいいくらいです。経営者に強い思いがあると書ききることができるようになります。

二つ目は、推進する力となるということです。

実際に事業が進めば、いいことばかり起こるとは限りません。どちらかと言えば、逆風の中をかいくぐりながら事業を進めていくのが実情です。したがって、当初の士気が高くても、時には、心が折れてしまうこともあります。そのような状況下、自らを鼓舞し続けることができるのは、思いの強さです。強い思いがくじけそうな気持を支えます。

三つめは、巻き込む力となるということです。

事業が進めば、ひとりではなく、複数人で事業を推進することになります。もとより、皆それぞれ価値観も考え方も違う者たちが寄り集まっているのが組織です。にもかかわらず、経営者の中には、自分の熱い思いは、スタッフも共有しているはずだと勘違いしている方もいらっしゃいます。そんなはずは、ないのですが。

それでも、熱い思いの経営者には、そういう人と仕事がしてみたいと共感する人が集まるものです。熱い思いが同じ方向を向きやすい人を巻き込んでいくエネルギーとなります。

少々大げさに聞こえるかもしれませんが、それくらい熱い思いというのは、影響力が高いものなのです。

私は、このペットビジネスの成功が半分は達成されたとみています。これからの事業化推進のお手伝いが楽しみです。

第三者承継の状況

事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことをいいます。 中小企業にとって、オーナー経営者の経営手腕が会社の強みや存立基盤そのものになっていることが多く、「誰」を後継者にして事業を引き継ぐのかは重要な経営課題です。

誰に事業を引継ぐのかにはついては、大きく3通りの方法があります。

親族に承継する

(親族外の)従業員等に承継する

上記以外の第三者に承継する

この第三者に承継することを通常、M&Aと言います。

では、どの位の件数の第三者承継が行われているのでしょうか。

各県に事業承継を促進する「事業引継ぎ支援センター」と呼ばれる国の機関があり、後継者不在の中小企業の事業承継を支援する目的で設置されています。
ここでの相談件数と実施件数を見てみましょう。

平成30年度の事業引継ぎ支援センターへの相談件数は7,768件、そのうち事業承継に至った件数は545件でした。成約率7%ですね。思ったより多くはない印象です。

もちろん、事業引継ぎ支援センターを利用しない事業承継もあるでしょうから、これ以外にも成約した数は、あります。

次に、会社がどれだけ毎年廃業されているか見てみたいと思います。つまり、引継ぎが可能であるけれども、されなかったであろう推定数を見ることにしましょう。

こちらは東京商工リサーチにそのデータがありました。

こちらを見てみるとおおよそ毎年4万社が廃業されていて、そのうち倒産によるものがおおよそ8千社程度と読み取れます。つまり、会社の調子が悪くないのに廃業せざるを得なかったのが年間3.2万社程度です。ものすごい数ですね。

その理由も東京商工リサーチのデータにありました。

廃業した代表者の年齢推移をみると、60代から70代で約70%を占めています。代表者が引退する際に、承継されなったために起きた廃業数です。

とても大雑把に申し上げれば健全な会社が高齢で身内や近しい人に引き継がれないため、毎年、3.2万社が消滅していることになります。

このような状況が起きるには、二つ考えられます。

一つ目は、自分の会社を売却できるという認識自体が高齢の経営者に少ない、ということです。

二つ目は、承継の情報は多くがネット上で流通していますが、高齢の経営者ほどそうしたメディアとの親和性が低い、ということです。

私の実体験で申し上げれば、50代の経営者ですと事業承継という方法があることを認識していらっしゃる方は増えてきていますが、70代ですとそのような情報があまり入らない環境にいらっしゃると思います。

したがって、事業承継の機会を承継する側からあげていくには、経営者のそばにいる金融機関あるいは顧問税理士によるサポートが極めて大事になってきます。

ところで、私の仕事の目的の一つに「残すにふさわしい事業を発掘、再生、成長軌道に乗せる」というものがあります。

全ての事業が残すにふさわしいのではないとは思いますが、いいものを未発見のまま埋もれさせたくないですね。

では、譲り受ける側がこれら事業を発掘するには、どのようにすればいいのだろうか、という課題が出てきます。

それについては、別の機会に書きたいと思います。今日は、こんなに引き継がれないのかということをご理解いただければと思います。

統計をみていたら、こんなものも見つけました。

総務省の統計によれば、15歳から64歳の生産年齢人口は2017年の7,596万人が2040年には5,978万人と減少することが推計されています。

これは、平均すると毎年70万人程度の人口減です。

毎年、高知県の人口と同程度の生産年齢人口が減っています。

これだけ人口が減少すると、承継してもどうやって再生、成長へ持ち込むことができるのだろう、また、潜在顧客数も減少していくという日本全体が抱えている構造的な問題もあります。こちらについても、承継後にどのように新しく事業を組み立てていけばいいのかという課題になりますね。

仕事ができる人と性格がいい人

仕事ができる人と性格がいい人どちらが大事なのか。

経営者にとっては、人事は、いつも悩むところですよね。通常の人事評価時ももちろんそうですが、コロナ禍で何人かお引き取りいただかなくてはいけないときなど、最終的にどのように判断したらいいのだろうか、ということを、私もよく聞かれます。

そこで、「仕事ができる」と「性格がいい」という判断軸で考えてみましょう。もちろんそんなに簡単に決められるか!という声が聞こえてきそうですが、案外、究極はこの二つの選択肢の間のどこかに回答がありそうです(会社のご判断として、仕事ができるとは何か、どんなキャラクターが自社にとって好ましいかなどという基準は、あらかじめ決めておかれたほうが良いかと思います)。

さて、この二つ判断軸をマトリックスにすると、

1.仕事ができて性格もいい

2.仕事はできるが性格はよくない

3.仕事はできないが性格はいい

4.仕事もできなく性格もよくない

という四象限に分けられます。もちろん両者をゼロイチではなく、それぞれ何パーセントくらいあるかなどを考慮してもよいです。

1は、まったく迷わないですよね。逆にこのような人にいてもらうために会社は、何を支援すればいいか、真剣に考えるところですね。

縁故入社などがある特別な事情を除けば、4も迷わないはず。

悩ましいのは、2と3でどちらを優先するべきなのかという場合ではないでしょうか。

会社は、それ相応の機能を提供してもらう場なのだから、結果を出してもらうほうが大事であり、したがって、2を選択します、というのが普通の反応です。いくら性格がよくても利益に貢献してもらわないと意味がないわけで、確かに儲けていただける人にいてもらいたいですよね。

一方で、あまり仕事はできないけどあの人がいると、雰囲気がいいよね、という場合があります。中長期で物事を見れば、3を選択する経営者もいらっしゃるでしょう。

ここからは私見ですが、特に中小企業では、あまり大きな失敗が許されないものです。一つの大きな問題が起きただけでも立ち直れなかったり、後を引いたりする可能性が高いのが中小企業です。

したがって、少しでもマイナス要素の芽が出てきたら、早めにそれを摘むように運営されるべきと思います。

その前提でどちらかを選ぶかについては、次のように考えます。

性格がいいというのは、会社に即効性のあるプラス要素はあまりもたらしてくれないけど、ゼロより下にはならないのですよね。最悪でもゼロ貢献ととらえられます。

一方で性格がよくないと、マイナスのことをする可能性を秘めているのです。悪意があるかないかは別としても、不作為も含めて、なにがしか会社にマイナスの状況を起こしうる可能性が性格のいい人より高いものなのです。マイナス貢献が有りうる。

したがって、常にマイナス要素を少なくして運営していくという観点に立てば、3を選ぶことになります。

実務上は、様々な要素を利益衡量して、決めていくのでしょう。しかし、この判断軸が組織に及ぼす影響は、とても高いものと思います。

思い切って考えないと進まない場合は、上記を参考にしてください。

フランチャイズ事業で経営を始める

最近は、中小企業のM&Aが盛んに喧伝されるようになりました。

M&A仲介会社も細かくサポートするようになってきましたし、このような本も出ています。

これまでサラリーマン時代に培ったノウハウを活用して、同種の企業を取得し、事業を開始するのは、当方もお勧めするところです。

ところが、M&A仲介会社から聞いたのですが、おおよそ交渉も終わりに近づき、懸念材料がほぼないにもかかわらず、買い手が下りてしまうケースが散見されるということです。実際に会社を所有して経営していくということに直面すると不安が勝ってしまい、自信がなくなるようです。

会社を所有すればサラリーマン時代にやっていた業務だけではなく、これまでやってこなかった業務も含めて、経営全般を見なければいけません。特に独立して初めて経験する業務として、経理、税務、銀行対応などがありますが、不案内なことも最初からしっかりやらなければいけません。このようにやるべきことが多いことがプレッシャーに繋がります(私も以前は、同様の経験をしました。いろいろなことを従業員から、質問されるのですがすぐ答えられないことも多かったです。また、誰に何を聞いていいかもわからない状態になることもあり、そのまましばらく問題を抱えていたことも多くありました)。

そこで、サラリーマンは、嫌だけど、独立は、ちょっとまだ重い、かといって、副業などでコツコツやるのが向いていない方には、フランチャイズビジネスを始めてみることをお勧めしています。半分独立みたいなものですね。

フランチャイズビジネスとは、「本部」と呼ばれるフランチャイザーと「加盟店」が契約を結び、加盟金(ロイヤリティ)を支払うことで、本部の商品やサービスを販売する権利をもらい、また本部にサポートしてもらいながら、事業を運営していく仕組です。

フランチャイズの仕組は、飲食業や小売業、またサービス業などに多く見られます。業種や形態は様々ですが、自分だけで経営するのと大きく違うのは、本部のサポートを受けられるところです。

様々な業種や形態があるので、よく調べる必要はありますが、本部は、大きく次のようなことをサポートしてくれます。

-開業資金の融資、資金面のサポート、銀行応対サポート

-開業までの細かなサポート

-接客や販売の指導

-経営の指導

-研修の実施

-定期的な業務内容のレベルチェック

-本部がマーケティングや広告宣伝をしてくれる

-店舗のあるような事業であれば適切な立地選び

加盟店になると本部にロイヤルティを支払わなければならないのですが、それでも本部からは、結構な内容のサポートが受けられると思います。経営することは、わくわくすると同時に不安も同居しますから、精神的/物理的な負担を少し減らして、船出するという方法もありではないでしょうか。

もちろん、加盟店になっても、本部の会社とは別ですから、一国一城の主になることに変わりはありません。先程、申し上げた経理/財務などをそれなりに理解しなければならないことに変わりはありません。ただ、繰り返しますが、一人で何でもやることを思えば、この半分独立した(少しリスクを下げた)状態で、経営及び事業の経験を積むことができます。

ある程度、自信がついた段階で、(半分じゃない)独立を選択することができます。また、このままフランチャイズビジネスを継続する、あるいはフランチャイズの種類を増やしていく展開もできます(したがって、フランチャイズ契約で、いつ契約が終了するのか、契約終了後もその事業は続けられるのか、などをきちんと事前に確認しておくことがとても大事です)。

なかなか先行きが見えないコロナ禍で、独立を希望していても、思い切った戦略が打てないなら、この半独立というステップを踏むという方法は、リスクを軽減しつつも少し前進という点で有効と思います。

オーナー経営者の報酬の決め方

オーナー経営者の報酬は、どのように決めるべきなのでしょうか。

それは、オーナーと経営者の立場を分け、三つの視点で経営者報酬を決定すればよいのです。

まずは、オーナー経営者とは、どういう立場かを簡単に説明します。

オーナー経営者とは、株式のほとんどを持っていて、その株主が経営の実権を取るような場合です。

建付け上は、オーナー(株主)というのは、実際の経営が得意でない、あるいは面倒なので、どこからか経営のうまい人を連れてきて、その人に会社の経営をお願いします。

オーナー経営者とは、それを他人に委託しないで自分でやろうということです。

このうち、日々の会社のよしなしごとにタッチしているのは、オーナーでなく、経営者の立場です。

次にオーナー経営者が会社から得る報酬の順序を損益計算書をベースに考えてみます。

経営者の立場は、役員報酬という名目で会社から金員を受領します。損益計算書上では、従業員がもらう給与と同じ順序で受領しています。

そこから各費用が引かれ、営業利益になります。営業利益の下に利息費用があります。銀行は、この位置で利益の恩恵にあずかれるということです。

その次に税金です。順序で言えば、日本国家は、控えめな位置にいますね。

さらにその下に納税後に残余資金があればそれを株主配当として、オーナーが受領できる権利があります。オーナーのご褒美というのは、最後の最後ですね。

このようにオーナーには、あらかじめ決められた報酬はなく、会社の最後に利益の恩恵にあずかれるだけです。とても儲けている会社であれば、株主配当金がすごいことになりますが、たいていの中小企業は、そんなに残っていないのではないかと思います。

以上のようにオーナーと経営者は、その金員の受領方法が違いますが、実際にこんなことを考えて金額を計算しているオーナー経営者はあまりいなく、全ての権限をもっているので、欲しい金額だけ、経営者報酬を受領することができます。

それでは、オーナーの権利を切り離して、経営者の報酬をどのような考え方に基づいて決めればよいのでしょうか。それは、次の三つの視点で構成すればよいのです。

会社の目的、目標があって、それに近づく経営ができたか

業績に連動するような形で報酬が決められているか

組織の長として機能したか

他にも手法はあると思いますが、経営者報酬を上記の視点で算定すれば、ステークホルダーからも公平感、納得感が得られるのではないでしょうか。この三つを抑えておけば、途中で何度も金額を変更する必要もなくなります。

ちょっと意地悪な言いようですが、「もし自分が(オーナーではない)雇われ経営者で、転職活動するとしたら、この報酬額で雇ってもらえるところはあるだろうか。」と考えてみるのはいかがでしょうか。

今の報酬額で雇ってくれなそうであれば、減額してもよいかもしれません。

余計なお世話と言われそうですが。。。

オーナー経営者総合サポートとはなにか

私のホームページには、オーナー経営者を総合サポートとタイトルにあります。今日は、それがどのようなものかを説明してみます。

まず、「オーナー経営者」とは何かです。
「オーナー経営者」とは、(株式会社であれば)株券のほとんどをご自身または親族が保有し、且つ実際に経営に携わっている方です。

一般的には、個人(オーナー)が会社を作り、資金を会社に投入して、事業を起こします。
最初のうちは、事業規模も小さいので、すべて一人で業務を回すことができます。

事業が順調に進みますと、新たに事業所や支店を開設します。
事業によっては、お客様対応も増えてきます。
人員を増員するため、採用活動の頻度が増えてきます。
従業員数が増えれば、人事上の課題やトラブルも人数に比例して、発生します。

販売促進のため、集客サイトとも契約し、ホームページの更新もしなくてはなりません。
仕入の安定確保のため、取引者数も増やします。
さらに安心のためにもう少し銀行借入もしておきたいと思ったりもします。

このように事業規模が大きくなっていくにしたがって、やるべきことの分野が増え、また、高度化していきます。

優秀な経営者の方であれば、そつなく器用に何でもできてしまう方がたまにいらっしゃいますが、多くの方は苦手なものにも時間を取られてしまい、事業拡大にブレーキがかかりそうです。
(念のために書いておきますが、大きくすることがいい事業である、と申し上げているのではありません。小規模でも楽しい人生を送ることはできます。)

そこで、それまでの経験値から引き続きご自身で対応可能(得意)なものと、門外漢のため、対応が難しい(不得意)ものとに分け、門外漢のものは、思い切って、人に任せてしまえばいいのです。

では、一体誰に任せたらいいのか。世の中には、それぞれ専門家がいるので、個別にお願いしてもいいのでしょうが、それだと結局、専門家対応であまり忙しさは減りません。

また、企業がかかえている課題は、複数にまたがる事象も多く、専門家単独では、対応しきれないこともあります。

そこで、事業以外の領域を包括的に引き受け、経営者を一括でサポートしましょう、というコンセプトを「オーナー経営者総合サポート」と呼んでいます(場合によっては、事業そのものの支援をするケースもあります)。

言い換えると、その企業が持っているリソースでは足りないものを社外の機能と連携(協働)させることによって、ひとつの事業体として捉え、推進していきましょう、ということです。
このような機能を提供できる方は、あまりいませんが、もはや中小企業といえども、一人ですべて経営できる時代ではありません。

このブログでは、過去から現在までに多数の経営者を支援してきた私の経験にもとづいて、オーナー経営者が事業を前進させるための具体的なヒントや、課題解決の事例、気づかずに陥りがちな落とし穴とその対処法などを発信していきます。

また、オーナー経営者だけでなく、オーナー経営者をサポートする参謀、経営企画、M&Aなどを考えている経営中枢にいらっしゃる立場の方などにもお読みいただければと思います。